冬うらら 1.5
□
 バタン。

 ドアが閉まって。

 4階のボタンのランプだけが点灯している、狭い箱の中。

 2人キリになった。

 本当に。

 いま後ろにいるのは、メイだろうか。

 そんな不安がよぎって、カイトは振り返れなかった。

 あの時。

 一瞬、人波で彼女の姿が消えた。

 次に見たのは後ろ姿で、そのまま顔も見ずにここまで引っ張ってきてしまった。

 もし振り返って、そこにメイがいなかったら。

 何てことを考えるのか、この頭は。

 カイトは、いま自分の考えたことを、首ごとちょんぎって投げ捨てたくなった。

 いるに決まっているではないか、と。

 もう、何も不安に思うことなどないのだ。

 彼らは結婚したのだ。

 夫婦なのだ。

 その言葉のロープを、カイトはがっちり握りしめた。

 そして、勇気を振り絞って身体をひねろうと思ったのだ。彼女の方に。

 なのに、エレベーターは3階で止まってしまった。

 ムッ!

 カイトは、自分の短気の尾が、引きちぎれそうになったのが分かった。

 誰かが―― おそらく社員が、このエレベーターで上を目指そうと言うのである。

「だからさぁ…そこの…」

「でもよ…って、あ! 社長!」

 予想通り社員が2人、目の前に現れた。

 開発室の連中で、見覚えのある顔だ。

 くんじゃねぇ!

 ドアの真ん前に立ったまま、カイトは、慌てる2人に感情を抑えずに言った。

「次のに乗れ」

 すかさず、扉を閉める。

 驚いた2人は、カイトが邪魔でエレベーターの奥の存在には気づけなかっただろう。

 それが、最後のハプニングだった。

 ようやく、2人は4階の会議室にたどりつくことができたのだ。
< 20 / 102 >

この作品をシェア

pagetop