冬うらら 1.5

 会議室は、案の定無人だった。

 カイトは入るなりドアを閉ざし、カギまで閉めた。

 うっかり、誰も入って来られないように、だ。

 それから、やっとゆっくりと彼女を、視界に入れることに成功したのだ。

 この環境が出来るまでは、まったく落ち着かなかった―― いや、いまでも全然落ちついてなんかいない。

 一体、何があった。

 見えない不安の霧がある。

 それを感じたカイトは、つい眉を顰めてしまった。

 きっと、その顔がいけなかったのだ。

「ご、ごめんなさい! 勝手に会社まで来ちゃって!」

 怒られると思ったのだろうか。

 彼女は心配そうな顔で、慌てて頭をさげたのだ。

 んなこた、どうでも…

「…いい」

 口から出たのは、最後の2文字だけだった。

 本当は、気にするなとか言ってやりたいのだ。

 別にカイトは怒っているワケではないのだから、それをうまく伝えてやりたいのに、このザマだ。

「ホントは、帰ってくるまで待とうかとも思ったんだけど…でも、どうしたらいいか分からなくて…だから、その…」

 メイは、つっかえひっかえに言葉を出すが、全然要領を得ない。

 早く用件を教えてくれないと、カイトの方が不安で圧死しそうだ。

 一体何が、メイにこういう行動を取らせたのか。

 やきもきしながら、とにかく言葉を待つ。

 気をつけないと、うっかり「早く言え!」と怒鳴りそうだ。

 それをぐっとこらえる。

 彼女を余計に怖がらせるだけだし、きっと自分自身も自己嫌悪に陥ること間違いナシだ。

「あ、あのね…」

 ばさばさ。

 彼女は、持ってきたバッグの口を開けて中を探る。

 そうして茶封筒を出した。

 更に落ち着かない手で、封をしていない茶封筒の口を開けて、中身を取り出す。

 白い紙。

 ペラペラの。
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