冬うらら 1.5

 役所だった。

 メイは、盛大に拍子抜けしてしまう。

 ずっと助手席で不安だったのだ。どこに連れて行かれるのか。

 彼があんな態度を取ったおかげで、生きた心地がしなかったのである。

 頭の中に、怖い想像ばかりが駆けめぐって、何を言われるのかビクビクしてしまっていた。

 なのに到着した先は、今日メイが記入不備の書類を受け取ってきた役所だったのである。

 驚いて運転席を見る。

 エンジンを止めたカイトも、彼女の方を見た。

 しかし、すぐにその顔は、ぷいとそらされる。

 カイトは、顔をそらしたまま、無言で車を降りてしまった。

 そのまま置き去りにされるのかと思いきや、助手席のドアがガンと開けられて。

 メイもそこから引きずり出される。

 そして―― 役所の建物の中に連れて行かれるのだ。

 あ。

 そこで、メイはようやく翻訳ソフトが動いたのが分かった。

 もしかして、と。

 もしかして、カイトは彼女一人に任せておけないと思ったのだろうか、と。

 だから、一緒に連れて来てくれたのだろうか。

 無言で自動ドアの内側に入ると、暖房がよく効いていて暖かい。

 しかし、その温度差にほっとしている暇はなかった。

 彼は、そのままカウンターへ向かったのである。

「あぁ…あなた方ですか」

 すぐに―― 発見されてしまった。

 昨日、婚姻届の面倒を見てくれた職員の人が、二人を見つけるなりカウンターまで近づいてきてくれたのだ。
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