冬うらら 1.5

 ドアの向こうのカイトが、何故か驚いたような、呆然とした顔をしているのを見て、メイは「え?」っと笑顔を止めてしまった。

 自分が、何かおかしな格好でもしているのかと思ったのだ。

 いまの自分の姿を、再確認してみた。

 しかし、別に汚れているようにも見えなかったし、おかしなところはないように思える。

 もしかして、顔に何かくっつけているのだろうか。

 メイが、そう考えた時。

 あっ。

 彼女は、いきなり引っ張り込まれるような力を感じた。

 気づいたら。

 カイトの腕の中だった。

 そのまま、ぎゅっと強く抱きしめられる。

 思いが溢れ出すような、熱い腕だった。

 え? え? えーーーっ??

 まさか帰ってくるなり、こんな騒ぎになるなんて思わずに、すごいパニックに陥ってしまった。

 とにかく彼女は、いままで通りに事を運ぼうと思っていたのだから。

『おかえり』の後は、このまま夕食の案内のハズだったのだ。

 なのに、カイトの方の考えは違ったようだ。

 全然、いままで通りではなかった。

 本当に、彼がこんなにスキンシップが好きな人だとは、思ってもいなかったのである。

 いままでのカイトを知る限り、触れようとしたら怒鳴られそうなイメージがあったのに、いざフタを開けてみたら、こんなにも抱きしめてくれるのだ。

「あっ…あの……おか…えりなさい」

 焦りながらも、彼女はもう一度その言葉を言ってみた。

 抱きしめられることは、イヤじゃない。

 それどころか、ドキドキドキドキして、頭がぼうっとなってしまって、おかしくなりそうだった。
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