愛かわらずな毎日が。

会社からほど近い場所にある公園で、ライトアップされた桜の木々を、福元さんと肩を並べて見上げる。


「きれー……」


「ほんとだ」


「やばい、です。感動してる。すごく」


「あはは」


去年の今頃は、近くのコンビニで缶ビールを買い込んで、同期メンバーとバカみたいに騒いでいたっけ。


だけど今年は。福元さんと一緒。


自然と口元が緩んでしまう。


「ふふっ」


「なに笑ってるの?」


「えっ?……ううん。なんでもない、です」


「ふぅん」


「ふふっ」


こうしていることが、なんだか不思議で。

だって。

あの頃は、想像すらしていなかったから。


福元さんを好きになることも。

福元さんの隣にいる自分も。


桜を眺める福元さんをそっと見上げた。


胸が、きゅうっと締めつけられる。

奥のほうからじりじりと熱いものが込み上げてくる。


「どうかした?」

ひらひらと舞う桜の花びらを目で追っていた福元さんが、私の視線に気づいて首を傾げた。


「泣きたくなるほど、好き」


そう言ったら、福元さんはどんな顔をするのだろう。


「福元さん」


「ん?」


「今年の桜は、去年と違う気がします」

福元さんの左腕に触れて、呟くようにそう言った。


「え?なに、それ」

福元さんが私を見下ろして、ふわりと笑った。

だから私も笑顔で返す。


「いつもと違って見えるんです」

< 232 / 320 >

この作品をシェア

pagetop