愛かわらずな毎日が。

夜の公園。

春の風。


見慣れた景色。匂い。

触れるもの。消えるもの。


桜だけじゃない。


すべてが違ってみえる。

すべてにドキドキさせられる。


熱くて。泣きたくなるほどキラキラしていて。


「ねぇ、福元さん」


「うん?」


福元さんも。私と同じように感じてくれてたらいいのに。


見るもの、触れるもの、すべてがいつもと違ってみえて。

ドキドキしたり、切なくなったり。

愛おしくてたまらない、って。


そんなふうに感じてくれてたら、うれしい。


「福元さんは?なにか、いつもと違ってみえたりしてる?」


「んー…、そうだなぁ。違ってみえる、かも」


「かも、……ですか」


「あはは」


福元さんは、いつだって余裕の表情で。

それが、ときどき悔しかったりする。


自分の余裕のなさを思い知らされて。

「私たちの未来は、福元さんに委ねられている」と、思ったりして。


だけど、今日。

福元さんのとった「大人気ない態度」のわけが、私の想像するものと同じであるならば。


私も少しは自信を持っていいのかな。



「ねぇ、福元さん」


「うん」


「大人気ない態度をとったりしたのは、どうして?」


「……え?」


私に向けられていたやわらかな表情が、驚きの表情へと変わる。

だけどすぐにいつも通りの表情に戻して、

「そんなの、訊かなくてもわかってるくせに」

そう言って笑う。


あぁ。ほら、やっぱり。


福元さんはいつだって余裕の表情で。

そうやって笑うんだ。

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