愛かわらずな毎日が。

ひとくち、ふたくちと、口に運んではゆっくりじっくり噛みしめる。

何年かぶりに食べる牛丼は、なんだかとても美味しくて。

気を抜いたら、涙が溢れ出しそうになる。


私は視線を上へ向けると、

「あー、幸せ」

そう口にして、ほぅっ、と息を吐き出した。


私の右隣りでクスクスと笑った佐伯さんが、

「ほんと、美味しそうに食べるね」

と言うから、

「だって。美味しいですもん」

そう返して、またひとくち口に運んだ。


むかしからこうだ。

なにかあるとガツガツ食べてしまう。

食べていないと落ち着かない。


でも。

最近は、こんなふうにガツガツ食べるなんてこと、なかったんだけどな。


今日はダメだね。

食べていないとダメだ。


つゆの染みたご飯をすくい上げた私は、佐伯さんの視線を痛いほど感じながらも、大きな口を開けてそれを放り込んだ。


「愛ちゃん、」


「ふぁい?」


箸を止めた佐伯さんが、左手で口元を押さえて小首を傾げた私に言った。


「大丈夫?」

と。


「………、」


やっぱり。

やっぱり、そうくるよね。


大丈夫、……って。

言いたいところだけど。


「佐伯さん。その言葉、今使うのは反則です」

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