愛かわらずな毎日が。

福元さんの中で、玲香さんが。

玲香さんとの思い出が。


どんなかたちで残っているのかはわからないけれど。


それを越えたいとか。越えられないとかで悩んだりするのは違うと思った。

だって。


玲香さんとの過去も、福元さんの一部。

私が好きになった福元さんの一部なのだ。


だから。

福元さんを過去ごと抱きしめよう、って。

そう思えたんだ。



「……福元さん、」


「うん」


「正直に言うと……。私、
玲香さんに嫉妬したんです」


私の言葉にちょっぴり驚いた表情を見せた福元さんだったけれど、ゆっくり瞬きをしたあと、「うん、」と小さく頷いた。


「……なんていうか。玲香さんだけじゃなくて、それ以外の人にも。
福元さんと時間を共有した、ほかの誰かにも嫉妬して。……だって、
その人たちの思い出の中にいる福元さんを、私は知らないから」


胸が熱い。

のどの奥も、目の奥までもがジンジンと熱い。


きっと。体の奥底から湧き上がる熱い想いがそうさせるんだ。


「思い出ぜんぶを取りあげたいくらい、うらやましいって思ったんです、……けど。
気づいた、っていうか。
誰かが大切にしている過去を欲しがるんじゃなくて。……いまを。これからのことを」

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