愛かわらずな毎日が。
ストールを首にぐるりと巻くと、更衣室をあとにした私。
『お問い合わせいただいておりました商品が本日入荷いたしましたので』と。
ショップ店員からのメッセージを頭の中で何度もリピートしながら、
「お先に失礼します」
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
飛び交う言葉の隙間をくぐり抜けるように出口を目指す。
途中、
「あ。間宮さん…っ。今朝お渡しした申請書のことで、」
まだ制服姿で廊下を歩いていた経理部の小西さんに呼び止められたけど。
「ごめんっ。明日でも大丈夫かな。ちょっと急いでて。……えっと。そうだ!まだ森下がいると思うから、森下にでも…っ、」
そう言うと、申し訳ないと思いつつ、「わかりました、」という小西さんの言葉を待たずに歩き出した。
ごめんね、小西さん。
ほんと、急いでて。
理由を知ったら、きっと、くだらないって思うだろうけど。
「間に合うかな、」
時計に目をやるのも惜しいくらいに急いでいて。
だから。
「あ、……あのっ、」
会社を出たところで声を掛けられたときは、ほんとに困ってしまった。
どうしていいものかと悩んでしまった。
『ごめんっ。明日でも大丈夫かな。ちょっと急いでて』
そう言えるような相手ではなかったから。
「………ぁ、」
心臓がドクドクと激しく動く。
血の気が引いていく感覚と、胃のあたりがじわりと熱くなる感覚とが混ざり合い、眩暈をおこしそうになる。