愛かわらずな毎日が。

昨夜、私の中では解決したはずだった。

でも。

こうして目の前に立たれると揺らいでしまう。


私が出した答えは正しかったのか、と。


だって。

『大丈夫だよ』と福元さんは言ったけど。

こうしてまたやって来た。


どうして。

どうしてまた会いに来るの。


小さな、怒りにも似た感情が生まれる。

私はそれをどう扱えばいいのだろう。



「……あの、」

眉尻を下げた玲香さんが口を開いた。

だから私も。

「きょうは…っ、………会社には戻ってきませんよ」

咄嗟にそう口にした。


「………、」


「…………」


私と玲香さんの横を、ひんやりと冷たい空気が流れていった。


心臓は相変わらずバクバクと激しく動いていて。

おまけに胃までキリキリと痛みだした。


「あの……。今日は、直帰なんです……。
だから、……待っていても会えない、です」


自分でも扱いに困る感情を、ぶつけてしまった。

のどがヒリヒリと痛む。

胸がチクチクと痛む。


できることなら、今すぐここから逃げ出したい。


「………、」

それでは失礼します、とでも言おうかと思った矢先。


「………ごめんなさい」


玲香さんの、ふんわりと巻かれた栗色の髪がパサリと垂れた。


「………ぇ、」


玲香さんが私に頭を下げたのだ。

< 299 / 320 >

この作品をシェア

pagetop