愛かわらずな毎日が。
「仕方ない。これにするか」
再びリモコンをおなかの上に乗せた私はそう言うと、フーッと長く息を吐き出した。
地元テレビ局の情報番組。
Tシャツとハーフパンツ姿の男性リポーターが浜辺でマイク片手に喋りまくっている。
暑苦しいのは彼のほうだと思う。
母親に言われた「暑苦しい」という言葉が、頭のどこかに引っかかっていたのだろうか。
額に滲む汗もそのままに、カメラの前で仕事をこなす彼に対してそんなことを思ってしまった。
「………あ。ここ、」
ふと目についた、画面の隅に出された地元の海水浴場の名前。
今日、彼氏と行くはずだった海。
「ほんとなら、私だって」
言いかけてやめた。
その代わりに、
「バカじゃないの」
と、リポーターの後ろで携帯を耳にあて、カメラにむかって手を振る若い男の子たちを鼻で笑った。
もしあの場にいたら、私だってそうしていたかもしれないのに。