スノードーム




「ちょ…綾人…?何言っ…」




パシン



取り乱し怒鳴り散らす私に焦った顔をした先輩が手を伸ばしてきたけど、私の手のひらはそれを強く振り払った。


いつも、触れたくて仕方なかったあの手を。

大好きなあの手のひらを。


シン、と静まり返る部屋の中。


私だって、こんなことするつもりじゃなかった。

自分が先輩の手を払うなんて、思ってもみなかった。


だけど、だけど触れられたくなかったんだ。

あの子に触れた、あの手には。




「最っ低」




睨み付けるように先輩を見上げてから図書室を飛び出す。


外はあの日貰ったスノードームの中のように雪が舞い散り始めていた。




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