雪人
 謁見室の広間に一際大きな金属音が鳴り響いた。
 拮抗する二つの剣。
 剣を弾き後ろに下がる両者。が、ベルライズの持つ剣が、零れるように落ちた。
「………」
 ルイは突然大きな隙ができた相手を訝しそうに見た。立ったまま何かを考え込んでいる表情で目を閉じている。
 そして、ベルライズはポツリと呟いた。
「俺は王や姫を近くで守るために騎士になったんじゃないのか……」
 ベルライズの閉じた瞼から出た涙が頬を伝った。ベルライズは今まで苦しめられてきた。王が亡くなり姫を絶対に守ろうと誓った自分が、今の今まで忘れていた。姫を助けるならどんなことをしても諦めず、守るはずの騎士が敵の言いなりとなってしまったこと。月明記のレミリアのように、例え命を落とそうと敵に立ち向かう。そのために騎士になったんだ。
 ベルライズは崩れるように地面へと膝を着いた。所々傷が付いた鎧が擦れ、音を立てる。
「行け。俺にはもう……戦う意志はない」
 もう話すことはない、と口調に込められた。
「何があったか知らないが、姫を守るために戦うのも、姫の命を握られ戦うのも、同じ騎士の役目なんだろ」
 王座の横にある扉に手を掛けながらルイが、後ろのベルライズに声を投げ掛けた。
「次からは殺す気で戦うんだな」
 気にくわないといった、声音でルイは眉をしかめた。そして、入っていった。
「……姫」
 ベルライズはルイを殺す気は全く無かった。急所を外した箇所にしか剣で攻撃していない。
 最初に技を使ったときに、離れた場所から仕掛けたのも経験不足からや高慢さからきたわけではない。しかし、予想外のことが起こった。
 それは、技を模倣されたことだった。一度見ただけで真似されるのは、予想外なだけに肝を冷やしたベルライズである。
 とはいえ全ては、相対する前からベルライズがそれを決めていたことだった。
 かくも、こうして二人の戦いに決着がついたのだった。
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