妖恋
あやかし


「・はぁ、はぁ・・・・」
荒い息遣いが今にもその実が壊れようとしていることを表していた。
「・・・・・まだ、壊れないのですか?」
目を伏せて軽い吐息を口から漏らした。
「・・・・そうですね。どうせなら。僕が苦しまないように息をつく暇も与えないぐらい
一瞬で、壊しましょうか」
真っ白な衣が翻り右手に握られた刀が壊れかけの者に最後のひと振りを走らせる。
「サヨウナラ」
「ウァァァァッッッッッッッッッッ!!!!!!」
首が横にバッサリと切れておびただしい量の血が噴出した。
血。紅く、赤く、アカク・・・・
壊された者はその場にうつ伏せに倒れこみ絶命する。
「裏切り者に情けは不要」

絶命したことを確認するまでもなかった。
鉄錆に似た匂いが辺りに充満し始め、
その匂いが鼻につき、酔いを誘う。
うっとりと・・・・
「はぁ、綺麗ですね。でも・・・・」
壊れたものの血を見下ろしながら血に酔いしれるが
「あなたの血は醜い部類に入ります。どちらかというと穢いです」
あっさりと酔いは冷めてしまった。

鈍く銀色に輝く刀から血を振り払い鞘に納め辺りを見回す。








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