妖恋

リズミカルに話す妖狗に雅姫はあきれ果てて深くため息をついた。
「はあ・・・もう・・ハックシュン！・・どうして・・・従者がこんな・・・」
こめかみを押さえてひどくなる一方の頭痛に顔をしかめる。
「あなたは本当に期待を裏切ってくれなくてうれしい限りです♪」
「何が期待どおり・・・なの・・よ・・・」
視界が眩み、頭がふらつく。
布団に勢いよく倒れこみそうなになったのを妖狗の大きな手に背中から抱きとめられた。
「・・・はぁ・・はぁ・・」
ぐったりとうなだれた頭を妖狗はゆらさないようゆっくり寝かせる。
「あまりご無理をせず・・」
「だれのせいだと・・・・はぁ・・はぁ」
反乱しようにも力が出ない。

コツンと・・・。
「大丈夫じゃなさそうですね・・・」
妖狗は自分の額を横から小女の額に当て、熱を計った。
髪の毛が顔にあたってこしょばゆい。
くしゃみがでそうだ。
「薬屋にでも行ってきましょうか？」
彼の優しさが一番温かかった。
「・・・・はぁ・・・はぁ・・・え・・ええ・・お願いするわ・・・」
額を放して、元の姿勢に戻った妖狗は立ちあがり、
少し背伸びをした。
そして、妖狗はいずまいを正し、部屋の障子を開けるが
そのまま出て行こうとはせずに一度雅姫にふりかえる。
銀色の長い髪が空気をもてあそぶように翻った。
「雅嬢。」
名前を呼ばれた。
「・・・・ハァ・・・な・・によ・・？」
その瞳と口元には優しくてどこかさびしげな笑みがたたえられ、
妖艶な雰囲気をあふれださせている。
いつもと違う妖狗に違和感を感じた、妖姫は眉をひそめた。
「・・・・・？」
だが、それはほんの少しのことですぐにいつものからかうような笑みに変わった。

「・・・・・雅嬢、さびしくても泣かないでくださいね？（笑」
「・・・・・・・・。」
「あれ？どうしました？やっぱり寂しいんですか？」
「・・・・・」
「・・・・・なくわけないでしょうがっっ！！」