ナイショの恋を保存中!~クールな彼の恋人宣言~
「ごめんなさい。なかなか思い出せないんです」


てっきりそのことかと思っていたら。


「いや、それはいいんだけど。今さ、大事なのそっち?」

「へ?」

「僕さ、クエの話しをしていたんじゃないよね?」

「あれ? なんのお話しでしたっけ?」

「谷本さん」

「なんでしょうか?」

「……いや、もういいよ」


こりゃあ長期戦覚悟だなと世良課長の呟きはこのときのわたしには聞こえておらず。

次に運ばれてきた子牛のグリルにわたしの思考は持っていかれてしまっていた。


そしてその日は話しがもとに戻ることはなく。

すっかりお食事に満足したわたしは上機嫌でおうちまで送り届けてもらい、ほろ酔い気分で世良課長の車を見送った。
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