【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】




「あの総合病院どうなるのかしら?」

「総合病院?」

「神楽、知ってる?

 あの丘の上に出来てる近代的な建物」

「デパートかなっとか言ってた?」

「そうそう。

 あれ、いろんな噂が出てたけど
 総合病院になる予定だって。

 その経営者に名前が入ってたのが、
 多久馬と西宮寺」


「多久馬と西宮寺って、
もしかして恭也と勇生君?」 


「違う違う。
 その親でしょ」




その言葉に、私は
自分の景色が崩れていくのを感じた。




「文香、でもそれどこの情報?」


「私の情報原、信じなさいって。

 融資していた取引先が動き出すだろうから、
 ちゃんと恭也君支えてあげるのよ」


急ぎ早に告げられたその言葉に、
私は茫然と立ち尽くした。




総合病院?



何?









話が大きすぎて、
私の思考ではついて行かないよ。







そんな文香の言葉が気になりながらも、
私は、夜の買い出しを済ませて
多久馬家のキッチンを借りて
晩御飯を作った。


今日は和食にしよう。








焼き魚やお味噌汁など
おふくろの味的メニューをテーブルに広げて
恭也の帰りを待つ。




料理を作ってる間、
携帯音楽端末から流すのは、
愛の夢。










予定より少し遅く帰宅した恭也は、
疲れ果てたのか、
テーブルの食事に少しだけ視線を向けて、
『ごめん。食欲ない』っと小さく告げて
自分の部屋へと帰っていく。





そんな恭也を追いかけて、
私は誘うように、
恭也を包み込んだ。






最初は抵抗していた恭也の指先も
次第に私の双丘へとゆっくりと手を滑らせてくる。




そのままベッドに倒れ込んだ私たちは、
何度も何度も深いキスを重ねあう。




現実から逃げ出すように、
貪り続ける積極的な恭也との情事。




貫かれる甘美な痛みは、
彼の声に出せない言葉のような気がして
彼から与えられる快楽に身を捩りながらも
何度も何度も、彼を求め続けた。


< 101 / 317 >

この作品をシェア

pagetop