【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】




「あぁ、それなりに……。
 悪い、勇生……今からまた出掛けてくる」

「出掛けるって?
 何処に?」

「隆景(たかかげ)のところ。
 隆景の一族は議員だ。

 政財界に通じていたら、
 何とかなるかも知れないだろ」

「神島隆景(かみしまたかかげ)。
 アイツも、そういやその道に行くんだよな。
 まだ新人議員だけど……」

「わかった。
 無理すんなよ」




そう言って送り出されて、病院を後にした俺は
神島家の自宅を訪ねる。




前回、神島と久し振りにあったのは、
三か月前のアイツの祝賀会のパーティ。




「隆景、悪い」

「恭也の話は知ってる。
 俺としては、力になりたい。

 だけどまだ今の俺では、
 無力なんだよ。

 雄矢からも連絡はあったよ。

 アイツもいろいろと動いてるみたいだけど
 うまく行かないらしい。

 祐天寺は、
 今は相手がデカすぎるんだよ」




そう知る人知る人に
相談を持ち掛けても、
いつもこの言葉で話が止まってしまう。




相手が悪い。

祐天寺はデカすぎる。





誰でもいい……。
祐天寺の対抗勢力に慣れる存在を
味方につけることが出来たら。



ただそれだけを探し求めて、
仕事と祐天寺親子の相手の間に
俺は奔走し続けていた。




全ては俺が
俺自身の幸せを手に入れて
父さんの夢も叶えるため。





「隆景、悪かったな」

「俺も悪い。
 力に馴れなくて。

 ただ今は無理でも、
 何時かお前の望みが叶えられるように
 俺もこの世界で走り続けるから」

「あぁ」




そう言って、隆景と別れながら
言葉とは裏腹に、
俺の精神状態は
更に追い詰められていく。



そして……あの日がやって来た。

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