【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

14.抱きしめて -神楽-




手術から数日が過ぎた頃、
真人を眠らせていた薬も抜かれて
ゆっくりと目を開ける我が子。



「真人……」

「どこも痛くない?
 恭也先生、呼ぼうか?」



そう話しかけた途端、
真人は酸素マスク越しに、
小さく告げる。


『ママが先生の事名前で呼んだね』って
嬉しそうに、笑った。



「そうだね。
 ママ、先生の事名前で呼んだね。

 恭也先生も、勇生先生も、
 美雪先生も、真人のことで
 いっぱいいっぱいお世話になって
 ママも仲良くなったのよ」


そうやって伝えるものの、
真人には誤魔化すことが難しいみたいで
ただただ純粋な眼差しで
私を見つめて笑ってた。


暫くすると、ノック音の後
「失礼します」と声が聞こえて
恭也君が姿を見せる。


目が覚めたばかりなのに
すでにベッドの上で
退屈そうにしている真人は、
恭也君が来たのが嬉しいのか
必死に体を起こそうとしてる。



「真人君、今日はまだダメだよ。
 
 手術した後は、
 無理しちゃいけないんだよ。

 真人君はママを泣かせたくないだろう。

 男の子はママを悲しませちゃいけないんだぞ。
 ママを守らないとな。

 だからもう少し、先生の言うこと聞いて
 いい子にしてくれるかな」


恭也君がそうやって声をかけると、
真人は素直に言うことを聞く。
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