【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

4.最後の願い -神楽-



何度か遠ざかる意識。

薄れゆく意識の中で
私の中の走馬灯が映し出すのは
恭也と過ごし続けた優しい時間。


彼が笑う
その笑顔に支えられたから
今日まで歩き続けることが出来た。


とっくに湖に沈めたはずの想いを抱え続けた
15年の年月。


その時間は、
優しい時間ばかりではなかったけど
それでも一番辛いその時間に
必ず彼は居てくれて、
本当の家族と言う形にはなれなかったけど
家族の形を知ることが出来た。


真っ白なウェディングドレス。



私には一生、
縁のないものだと思って居たのに
それを着る喜びも
幸せも彼は教えてくれた。




戸籍の中で結ばれることはない
時間の中でも、
私たちの間に、暗黙の了解で
結び合っていた想い。


私たちの結婚は、
婚姻に姿を変えることはなかったけれど、

決して忘れえることのない
永遠の愛が二人を何時も結んでくれた。

初めて婚(つな)がった
あの日から、
色褪せることのない結婚と言う名の
本来とは別の意味を持つ愛の調べ。


ピアノの弦(いと)が繋いで
引き寄せ逢った結び合えたその年月。



もう一度逢いたい。


叶うなら何もかもを預けて
愛しい貴方だからこそ
例え迷惑だとしても、
この子を託したい……。







必死に伸ばした先で微かに触れ合った指先。



愛しい我が子を
助けて欲しくて。






光の届かない暗闇では、
もうどうすることも出来ないから。







最後の願いはただ一つ。






愛しい我が子を
貴方の腕の中に託したくて。









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