【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

15.夜を抱きしめて - 神楽 -








その日、職場を早退した私は、
恭也君と共に自宅へと戻った。




リビングのソファーに座って、
サイドボードの中から
古いアルバムを取り出す。







もう恭也君には、
隠す必要はないと思った。





こんなにも過呼吸の発作で迷惑をかけてしまっている
彼だから……全てを包み隠さずに
話したい……そう思えた。






「これは?」





古いアルバムを見て、
恭也君は呟いた。





「私の大切な思い出」





小さく呟いて、
アルバムの最初のページをめくる。






命名

藤本神楽。




この子が奏でる音色が、
人の心の穢れを祓い
笑顔で満たしますように。









太字で綴られた名前。


そしてその隣に、
やや小さな字で書き添えられた
両親からのメッセージ。





そこには……
暖かい家族のぬくもりが感じられた。







そして次のページには、
まだ生まれたばかりの
私の両手と両足のスタンプ。





一頁、また一頁とめくっている
そのアルバムの中には、
確かに感じられる、
私と両親との家族の形が感じられた。






「あっ、この神楽さん可愛い」






ゆっくりとアルバムをふくる私と一緒に、
幼い日の私を辿るように
一緒にアルバムを覗き込む恭也君。




彼がそう言った写真は、
一歳の時の写真。




大きな御餅を背中に背負って
押し車にもたれるようにして
映っている私。
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