砂のオベリスク~第七大陸紀行~







 ミュシャ近辺の砂漠に棲息するアリジゴクの大まかな形状は、通常よく知るアリジゴクと変わりは無い。


しかしその大きさは、しばしば創世の魔物に見立てられる『翼を持つ爬虫類(竜の始祖といわれているもの。これについては諸説あったが、最古の地層から発掘されたこの生物の化石に、竜類のみが有する独特の喉笛が見られた)』を彷彿とさせる。




「おっと、舵がイッちまいましたよ。どうやら私はここまでですなあ」

「ああ、こんなことなら、アルバートルに名刺を渡しとくべきだったかな」



 捕食される側は、それの姿を見下ろすかたちになるのだが、獲物を待つ巨大な顎は、かなり生々しい恐怖を抱かせる。

まさに何かを壊すためのもので、挟み切る、すり潰すといった描写を容易に想像することができる。

その顎を目一杯に拡げて、抜け出せない穴の底に、さらに深い穴をつくる。




「アルバートル! ハッ、あのケチなくず悪魔!」

「知っているのかい?」

「いかにも。同業でさあ。仲間内でもひどく、評判がよろしくない奴でございますよ!」
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