砂のオベリスク~第七大陸紀行~

エンの逃走






 私はふと、これが現実のことではないような気がした。


珊瑚の木から落ちて砂に溺れたあの夢のように、これもまた、どこかにいる私が見ている夢なのではないか。


そしてミュシャは、いまだにどこか遠くで幸せに溢れているのではないか。





「そこも、よくも笑いを途絶えさせたな!」




 我に返れば、僧侶の褐色の手の平が目の前にあった。


私は悲鳴を上げて尻餅をつくが、手はそんな私の体を擦り抜ける。





そして、エンの腕を掴んで無造作に引っ張った。
< 94 / 108 >

この作品をシェア

pagetop