砂のオベリスク~第七大陸紀行~







そのとき、隣にいたはずの彼女が、手の届かない舞台に立ってしまったように感じた。





「きさま、逆らうか!」


 エンは通りへ出ることをこばんだ。

それでも引っ張られると、あいた方の手を思い切り振り抜いて、僧侶の顔を殴りつける。



うずくまる僧侶。

音を立てて仮面が割れ、ぼとりぼとりと地面に落ちる。



エンは迷いなくその場から走り去った。


追って、列をなした仮面の僧侶たちが走る。

仮面を割られた僧侶も後に続こうとしたが、彼の顔は怒りでゆがんでいた。

それを見た他の僧侶が吠える。



「ああ、きさま、裏切り者だったか。背笑千万!」


僧侶だった彼を、無数のこんぼうが叩き転がす。






私は取り残され、しばらく、エンの走り去った方を呆然として見ていた。
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