幸せになりたい女
SIX
 次の日の夜、勝久くんと神楽坂で待ち合わせをした。フランス料理を食べに行くらしい。
「フランス料理って言っても、アットホームな雰囲気で気取ってないところだから安心して」
 そう言って笑う勝久くんは、料理長とも顔なじみで、ワインもスムーズに選んでくれて、それなのにレストランと同じようにホントに気取ってなくて・・すごく素敵。

 このまま勝久くんの彼女になっちゃえば幸せかなぁ・・

 明日が土曜で二人とも会社がお休みだから、ごはんの後は美久の部屋でゲームで遊ぶことにした。卓ちゃんが置いてったゲームを他の男の子と遊ぶって変な感じ。
「美久ちゃんの部屋はどんな感じ?」
「んん・・女の子っぽくないかなぁ・・」
「へぇ! 意外」
「だって美久・・バイクとかゲームとか男の子みたいなこと好きだし・・」
 勝久くんには美久が落ち込んでる理由はまだ言ってない。勝久くんも聞かないでいてくれる。優しい勝久くん。
「バイク? 美久ちゃんバイク乗るの?」
「うん。免許取立てだけどね」
 卓ちゃんに勧められて取った免許。卓ちゃんとツーリングしたくて・・。
「へぇ、じゃあサーフィンの前にツーリング行こうよ! オレもバイク好きだよ」
「・・うん!」
「ほんとに美久ちゃんとは趣味が合うなぁ。運命だね!」
「うん!」

 もしかして・・免許取ったのは勝久くんと出会うためだったのかなぁ

 そんなことをぼんやり考えてしまう。
「美久ちゃんの部屋、楽しみだなぁ」
 下心が少しもない笑顔。その笑顔がどんな色っぽい男の顔に変わるんだろう。想像するとギャップがあってドキドキする。卓ちゃんとちゃんと別れたわけじゃないのに、こんな気持ちになっていいのかな。
・・いいんだもん・・! だって美久は急に予告もなく捨てられちゃったんだもん・・

―今夜はきっと、美久の中から卓ちゃんが消える日―
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