幸せになりたい女
 美久の家に着くと、勝久くんは買い置きしてたオイルサーディン用の鰯を使って簡単なおつまみを作ってくれた。なんていうお料理か分かんないけど、コンビニで買ってきた白ワインと合っててすっごくおいしかった。勝久くんは料理が趣味みたいで、美久なんかよりずっとずっと手際がよかった。
「すごいね! 勝久くんって。美久、女の子なのに料理の腕負けちゃうなぁ。でもね、でもね! ハンバーグは自信あるから、今度作ってあげるね!」
 卓ちゃんがプロ級だって褒めてくれた美久の得意料理。
卓ちゃんと過ごしてきた毎日は全部勝久くんに出会うためだったんだ。きっと。
「マジで? 楽しみ!」
 そう言いながら勝久くんは部屋を見回してた。きっと卓ちゃんの名残りに気付いてる。
「勝久くん、ゲームやる?」
 勝久くんの目線を自分に戻したくて、彼の腕に自分の腕を絡めて上目遣いに見つめた。神楽坂のお店からずっとワインを飲みっぱなしで、美久の目はトロンとしてる。いまゲームやったら何のゲームでも確実に負けちゃう。
 でも大丈夫。ゲームが目的じゃないってことちゃんと分かってる。卓ちゃんとのこと、全然解決してないけど・・今は誰かのぬくもりの中で眠りたい。
 勝久くんの手が美久の頭をなでた。そのまま背中の真ん中まである美久の髪の中に指を通した。
 
 気持ちいい・・触り方が優しいんだぁ、勝久くんって

 乱暴に強引に自分のものにする卓ちゃんとは違う。
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