私をブー子と呼ばないで
 今夜はいつもの飲み仲間と夕食を居酒屋で共にしながら、近況報告。

 とは、言ってもただの愚痴大会だけど。

「パワハラに、セクハラ。一体、私にどーしろって言うのよっ!」

 ガンっとロックの梅酒をテーブルに叩きつけて、智美が不満をぶちまけた。

 インテリアコーディネーターとして、バリバリと仕事をこなしている29歳の笠原 智美。

 私と同じ年で、未婚。だけど私とは大違い。

 キャリアウーマンだし、彼氏もいる。

 両親がいる家を出て、一人暮らしをしている。

 29歳の女人生を満喫している。

「じろっと僕を睨まないでよ。僕は智美の上司じゃないし」

 智美に睨まれた黒崎 翔太が肩をすくめて苦笑した。

 翔太は、27歳のエリート会社員だ。高学歴で、大学卒業と同時に、大手企業に入社。

 仕事の功績を認められて、若いのに課長というポストについた。

 頭が良くて、仕事ができて……それだけで羨ましいっていうのに、イケメンという特典までついている。

 翔太もまた、両親のいる家から独立して、会社の近くのアパートで一人暮らしをしている。

 彼女は居ないと言うが、まわりの女性たちが翔太を一人にしておくはずがないと思う。
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