はだかの王子さま
 この近くに、家族がいる、とはいえ。

 入っちゃ行けない場所に、いるんだもん。

 彼が警備員の格好をしていたら……ううん。

 人間の姿をしているだけでも、怖くて、逃げだしていたかもしれない。

 けれども、彼はどちらでもなかった。

 彼は、一見、獣のぬいぐるみを着て踊るダンサーのようで。

 その身にまとった毛皮一枚の他に、何も服は無く。

 ただ、わたしが聞けば、静かに、答えた。

「僕は、わる~~い、狼だよ」

「……オオカミ男、さん?」

「いいや、違う。
 狼男って、人間になれるヤツのことだろ?
 ……でも、僕は、ず~~っとこのままだから……
 ……ただの獣だよ」

 ちょっとだけ話をした、このころから。

『彼』がなんとなく、ただのヒトじゃないって感じがしてた。

 けれども、その声がなんだか、寂しそうで。悲しそうで。

 きゃーって悲鳴を上げて、逃げ出す代わりに、質問をしていた。

「なんで、ず~~っとケダモノのカッコなの?」

「昔、大切なヒトを傷つけてしまってね。
 魔法使いに、命が終わるまでず~~っと。
 醜い獣の姿で居ろって言われたんだ」



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