はだかの王子さま
 なんて。

 ほとんど反射的に、燃える大扉が見えるはずの、南側の窓に目をやり……

 わたし、そのまま、固まった。

 だって。

『……扉の炎が消えている』

 どうやら、今は結構遅い時刻。

 フェアリーランドの、閉園寸前って所みたい。

 塔のてっぺんから、下を眺めれば、表門の入り口も、すっかり出口専用になってた。

 帰り支度をしているヒトもいるけれど、まだ、たくさんのお客さんが残っている。

 そんな、ランド内を移動したり、帰るお客さんでごった返している正面ゲートの広場にある扉には。

 轟々(ごうごう)と燃え盛っているべき火が無くて。

 変わりに、ぽっかり空いた扉の向こう。

 異世界ビッグワールドの真昼の太陽が、こちら側の世界を照らしていた。


 な……ん……で?


 星羅は、一年間炎を維持するのは難しくても、一日勝負なら、絶対に負けないって言ったのに!

 呆然としているわたしに、王さまは、笑う。

『ビッグワールドにて『世界を滅ぼす覇王』の『本物の剣』が復活したのだよ。
 我が、愛しのヴェリネルラ』

『……え?
 それって……どういうこと……ですか?』

 王さまの言っていることが、判らない。

 だって。

 覇王の本物の剣って……蒼い髪のセイラ、でしょう!?

 それは、金髪の星羅と魔剣0(ゼロ)とが融合した状態の……ハズで。

 星羅が、こっちの世界。

 魔剣0がビッグワールドにいる以上、二人がそう簡単に融合するとは、思えなかった。

『わたしが、眠っている間に、星羅……ゼギアスフェルがビッグワールドに出かけて行って、それで、0と融合しちゃったって………こと?』

『違うな』

 わたしが思いついた可能性をあっさり否定して、王さまは、狼の顔で笑った。

『覇王の『剣』は、ゼギアスフェルでは無く、フルメタル・ファングの方だったのだよ』

『……ウソ』

『偽りではない。
 フルメタル・ファングを追って、覇王の御堂にやらせた我の騎士が、何人も、目撃しておる。
 フルメタル・ファングが、覇王の御堂の中。

 覇王の遺体の前で魔剣0と融合し……蒼い髪の人物に成り変わった所を……のぅ』
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