僕はショパンに恋をした
「あのさぁ、何でついてくるんだよ?自分の泊まってるホテルに戻れよ。」

「特にホテル決めてないから。大丈夫。心配しなくても。」

いや…、だから心配なんかしてねぇっての。

深く溜め息をつく。

「なんで俺についてくるんだ?」

「さて、どうしてでしょう?」

「疑問に疑問で返すな…。」

脱力しながら言うと、あははと笑って言った。

「ほら、袖振り合うも多少の縁っていうんでしょ?」

「だからって、何の目的で行動を共にしなくちゃならんのだ?」

俺の言葉に、今度は初めて見せる真剣な目を向けた。

「聴きたいんだ、僕も。そのピアノの音。」

俺は一瞬、やられた!と思った。

それを言われたら、否定できない。

俺もそうだから。

さらに深い溜息を付いた。

まぁ、あのピアノの音を、誰かと一緒に聴くのも悪くはないか。

またもやガラでもないことを思い、シオンの好きなようにさせることにした。
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