僕はショパンに恋をした
泣きそうな、睨むような、そんな瞳で空を見上げている。

昨日の、あの飄々とした柔らかい顔はどこにもない。

(なんだ…?あれ?この感じ…?)

思い出しかけた時、シオンが俺に気付いて、笑いかけてきた。

「おはよう。」

先ほどの顔が錯覚だったかと思わせるほど、柔らかい笑顔で。

「お…ぅ。おはよ。」

またもや間抜けな挨拶。

「早く起きたから、コーヒー飲んでたんだ。ひさぎもどう?」

頷いて座り、ウェイターにカプチーノを頼んだ。

「晴れて良かったね。」

シオンが俺を見て言った。

「…シオンは、良かったって顔、してなかったぜ?」

俺は自分が言ったくせに、その台詞に驚く。

人のことに、関心など抱くなんて、どうかしている。

自分自身、内側に踏み込まれるのが嫌いだから、他人にも踏み込まない。

それが俺のスタンスだった。

だったのに、さっきの顔に、何か思い出しかけたせいなのか、つい探るような事を聞いた。

言って後悔した。
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