鬼~oni~
お話
 告白するが、私は鬼であった。

 日毎に鬼になっていく自分の姿を鏡に映すのが怖くて、鏡を見なくなった。

 私は生まれて、ずっと、ひとりの人間の女だと信じて疑わなかった。


 24年、ずっと信じてきた。人間だと……

 だから、人間の男を愛し、人間の子どもを身ごもり、人間の子供を産んだと思いこんでいたのだ。

 だが、私は、私の本当の正体は鬼だった。

 夫は、赤子を抱えて離さない私にあからさまに嫌悪を示し、そっぽを向くようになった。 私が人間の女ではなかったことが、いつの間にかばれたのだ。

 夫はありがたいことに、それを世間にばらそうとはしなかった。

 しかし夫は、私の姿や、声に怯えるようになった。

 そうだろう、ある時ガラスに映るその姿は、鬼そのものだった。

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