鬼~oni~
 髪はぼさぼさで、口は耳まで裂け、耳はとんがり、目はぎゅっとつり上がり、ああ、日毎に大きくなっていく頭の角を、私はどうすることもできない……
 鬼である私は、赤子に乳を吸わせながら、青い涙を流す。
 
 そうして、ある時また気づくのだった。
 おおっ、なんと、私の小さな娘もまた、鬼だった。
 その頭に、小さな角らしきものを見つけ、私は、床に突っ伏して泣き崩れた。
 この小さな娘もまた、私のように苦悩するのだろうか?
 青い涙を流して、その血は緑色。
 鬼であることを悟られないために、外出も極力避けて生きていこうと思っていたのに。
 もはや、私の話し相手は誰もない。
 
 無邪気に笑う、小さな娘の歯からは牙がこぼれる。
 ああ、なんということ……

 普通の生活が、普通の人間の生活が私にはできない……

 小さな事で、娘をぶちはじめ、娘は泣き叫びながら逃げ惑う。

 鬼になってはいけない、鬼になってはいけない、

 小さな娘の体から、鬼を追い出そうと、私は必死になった。
 
 ある日、夫が、傷や痣だらけの娘を抱き上げた。

 夫は、哀しみと怒りと苦しく切ない、いちべつを私にくれると、娘を連れて去ってしまった。
 
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