先輩とあたし【完】

「………おり!伊織!」名前を呼ばれているのに気付いてその方向を見る。
「あ、ごめん。ぼっーとしてた。」満里子が心配そうに私の顔を除きこんでくる。
「ぼっーとしすぎやろ。なんかあったんか?」亜美も珍しく心配してくる。
「ううん、何もない…」私は二人に微笑んだ。

先輩のあの時の目は本気でほんとに私の思いを見透かしている、そんな気がした。あのときの先輩の顔、言葉がずっと離れない。

私は気付かないうちに気持ちを出してしまっていたのだろうか。そんなことないと思うのに…。

あのあと、先輩はまた普通に他の話をたくさんしていた。私は話が頭に入ってはこなくてずっと笑い続けていた。早く着いてほしい…今、先輩と話していると泣きついてしまいそうで怖かった。

「伊織ーっ!」グランドの向こうから俊哉先輩が大きな声で私の名前を呼んで手を振っている。
私も大きく手を振りかえす。俊哉先輩の隣には笑っている稲森先輩がいた。なぜか先輩を見ると苦しくなる。


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