5つの欠片
「結羅、こっちおいで…」





もやもやして堪らなくて、無意識に結羅の名前を呼んでいた。
俺の癒しの時間がもうすぐ手に入る。





メディアが取り上げる数々の記事、真実もでたらめも最近はよく載っていた。





世間が敏感だから、ちょっと外をでるのも一応顔を隠さなきゃいけない。
マネージャーが一日中俺を見張って融通がきかない。





最近は大好きな結羅との時間まで奪われる始末だ…





元々、ピアニストとして音楽家を目指して音大まで行ったのに、今や世間は俺のピアノを聴きたいんじゃない。




俺の顔とかスタイルとかそんなのが目的で、ピアノはまるでプラスα
ウィーンに留学に行こうと思っていた話も、人気に火がついたせいで潰された。




マネージャーは日に日にいらいらしていく俺を見かねていつも言ってくれた。




『すぐに人気が収まる時が来るわ。もう少しの辛抱だから頑張って…』





だけど、その言葉とは裏腹に俺のメディアへの露出は過度を増していった…






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