5つの欠片
《栞の好きなケーキ冷蔵庫にあるよ 
               峻》



小さな紙に書かれた温かい文字。
読んだ瞬間に胸がきゅーってなって、苦しくなった...




峻くんの字...
あたしの大好きなちょっとヘタクソな文字。




嬉しい...
ケーキがじゃないよ?
こうやって手紙が置いてあることが



こんな些細なことが何よりも嬉しい...




花瓶の水を丁寧に入れ替えて、また元の位置に戻す。
枯れてしまった生花を抜いて、新しく持ってきたのと入れ換えた。




赤、白、紫...
新たな彩りが加わって、全体像が一変する...
華やかになった花瓶が太陽に当たってキラキラ光った...




持っていたメモを半分に折って、鞄の中から手帳を取り出した。
背表紙を開くと小さなポケットの中にメモを挟んだ。




どんどん分厚くなっていく手帳。
全て峻くんの文字で溢れていた。
胸に押し当てて、ぎゅっと抱き締める...





目を開けてぱっと置いたばかりの花瓶を見つめると、自然と今朝の出来事がフラッシュバックした...





< 31 / 110 >

この作品をシェア

pagetop