5つの欠片

「写真」

朝陽が差してるベッドで寝ぼけたまま手を伸ばすと、横に居たはずの詩が居ない。



「............ん.........詩...?」




空を切るだけで何の感触もなくて、ちょっと虚しくなる。
目をこすって開けると、詩の代わりにくまのぬいぐるみが転がっていた。
詩の部屋にある唯一のぬいぐるみで相当大事らしい。





ぬいぐるみを掴んで座らせると、大きく息を吸い込んだ。
毛布から詩の匂いが口にも鼻にも入ってきて、満たされていくのが分かる...




ん...
やっぱ好きだな、この香り...
落ち着く...




毛布の中でトランクから取ったスウェットを履いて、ベッドを後にする。
寝室の扉を開けると、キッチンで詩の姿を見つけた。
ちっさな手が猫の手になって、レタスを刻んでる。





気づかれないようにゆっくり近づいて、後ろから抱きしめると詩の手が止まった。
包丁をおいて振り向いた姿がこれまた可愛くて、どうにかしてしまいたくなる...




「おはよう、和くん!」


「ん...おはよ。」


「まだ眠い?寝てても大丈夫だよ!
 時差ぼけでしんどいでしょ?」




いっつも鈍いクセにこうゆうところは本当良く分かってるんだよな...




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