木蓮の咲く頃 -春-
第一話
 いつもの朝、いつもの学校、いつもの教室。
「みーあーり!!おっはよ~!」
そしていつも通り私に声をかけてくる親友の柴穂(シホ)。
「おはよう!!1時間目何だっけ~?」
私はスクールバックから教科書を取り出し机の中に入れる。
「ん~?数学でしょ?ねぇ?」
「えっ!?」
柴穂は近くで本を読んでいた山野さんに声をかけた。
「ちょっ柴穂!!」
私は、クラスでも仲間から外れてる山野さんを見て、思わず小声で柴穂を止める。
「いいじゃん!もー!数学だったよね?1時間目。」
柴穂は笑いながら言う。
「…社会です。」
山野さんはさっきまで柴穂に向けていた視線を本に落として静かに言った。
「あれっ!?そう!?ゴメン!ありがとう~。」
柴穂は頭をかきながら笑う。
ガタッ
私は席を立って出口へ歩き出した。
「どこ行くの?」
柴穂も後ろから着いてくる。
「トーイーレ!!」
私は柴穂の方を振り返らず返した。

 「誰にでも話振るの止めてよね~!」
私はトイレの鏡の前でグロスをつけながら柴穂に言う。
「ハイハイ!」
柴穂も隣でグロスをつける。
「…」
「…」
しばらくお互い沈黙が続く。
髪型を直したり、制服を着崩したり、黙って鏡を見詰めていた。
「卒アル作りの作業って何時間目だっけ?」
先にその沈黙を破ったのは私。
いくら仲が良くても、沈黙はさすがに…キツい。
「…」
返事がない。私は横目でチラッと柴穂を見る。
鏡を見詰めたまま、動かない。手元を見ると、グロスを強く握りしめている。
「しーほ!!ちょっときいてんのー?」
私はそっと自分の手を柴穂の手に重ね軽く揺すった。
「え?あっ、うん。6時間目じゃない?ホームルームなしで放課後まで作業するってザッキー言ってたよ?」
柴穂はグロスをポーチに片付けながら笑う。
「まず作業の担当分けすらしてないよね。」
私も片付けながら言う。
「ザッキー結婚したよね。だからノロけてんだよ!非リア充の私らには無縁な事ねぇ!」
担任の話をしながら教室へと戻る。


 卒業しても2人で過ごす時間は無くなったりはしない。

そう思ってたのに―。
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