ここからまた
でかい声で俺を呼ぶ宏斗。


その声が届いた瞬間。



彼女と目が合った。

咄嗟のことで逸らせず、無意識にじっと見詰めてしまっていた。


ふと、彼女の表情が柔らかくなったと思ったら、何か言ったあと、軽く手を振り、奥へと姿を消した。





「けーぃってば!!何ボーっとしてんだよ。そろそろ行くぞ。あっ、そういやさっき、"藤 美南"がいたな。遠目でも美人は目立つねぇ。」


宏斗が何か言ってるみたいだったが、まったく耳に入って来ない。



俺の頭の中は、さっきの彼女の笑顔と言葉でいっぱいだ。


ただの都合のいい勘違いかもしれない。


でも、それでもよかった。





「宏斗、さっさと行くぞ。」


「なんで俺が遅いみたいになってんの!?おかしいっしょ!!…啓、なんかにやけてない??なんかいいことあった!?」


「なんでもねーよ。ほら、行くぞ。」


今日の部活は、いつも以上に調子が良くなりそうだ。





彼女からの『がんばって』の一言で。

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