愛玩~夢幻の秘密~

人なんかに見てくれたわけじゃなくて。


鷹都は、どんな手を使っても、あたしを手放したくなかっただけって。


小さなため息が言っている気がする。


「買われてしまったら、人に戻ってしまうから。」


人に戻ってしまったら。


心の置き場に困ってしまう。


鷹都の下げた頭をずっと忘れられないから。


今さら、不必要と捨てられてしまったら、あたしの心は鷹都を欲してしまうから。


まるで、人魚姫のように。


泡となって、消えてしまいそう。


その日を思い描くだけで。


大きな月を映しだす瞳には、涙が溜まってしまう。


そっとあたしの腰に伸ばされた鷹都の腕。


包み込むように抱きしめた。

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