【短】スノウ*グリッター


「てめ…何してんだよ」


制服の首もとをガシッと宙は掴んだ。世にいう殴りかかりそうな勢い、だ。


「や、やめて」

「でも!お前も見ただろ」


いいの、そう言えば宙は舌打ちをして手を緩めた。


「…ごめん、愛加」


その先にあるものは、解ってる


その言葉の意味も、知ってる。


「別れて欲しい」



今までのキスも、言葉も、全部
あたしだけじゃないんでしょう?



「…あの子がいいの?」

「アイツじゃなきゃ、ダメなんだ。アイツも俺じゃなきゃ」


ひどく落ち着いている自分が嫌になる。

初めてきいたよ。あなたがいう言葉の中でも最上級。


【アイツじゃなきゃ、ダメ】


負けたんだと思った。だから、悔しい、悲しいんだって。


「………わかった」



最後まであたしは【聞き分けのいい彼女】でいたかったわけじゃない、今回は。


涙を見られたくなくて、宙の「愛加」と呼ぶ声を背中に聞いて、傘を抜けた。


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