規則の守護者
瑞緒が通りかかった、フェンスの前。

1人の少女が、穴のあいた金網に手を掛けている。

以前に会った5人の子供達の内の1人だ。


「……行っては駄目よ。
立入禁止だから」


瑞緒の声に、少女は首を横へ回す。

少女の瞳が、瑞緒を捉えた。


「駄目じゃないよ。
だってほら、通れるよ」


少女は、左手を穴にかざして見せる。

外界との境。
遮るものは、何も無い。

あるのは。


「あなただって知ってるでしょう?

決まりは、破ってはいけないの」


あるのは、規則。

少女は、困ったように首を傾げる。


「分からないよ。
だって、通れるのに。

ここには何も無いんだよ」


少女には、規則は関係ない。



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