空の君へ〜命をみつめた真実のラブストーリー〜

忘れられない人



目の前が涙でにじんで
陽の顔さえ思い出せなかった


移り変わる季節の中で
おいてきぼりのあたし

涙が頬を伝い、想うことは


――――――……陽はあたしのすべてだった





「……っう……ようっ……」


「陽じゃねぇけど、どうした?」





優しい声がした

いつもいつも本当につらいときばかり現れる。


駅に向かう歩道橋の上
暗くなった空を見つめていたあたし。





「優……っ、陽にフラれちゃった……っ」


「……そっか。 でも泣いてたってしょうがなくね?」


「……でもっ……」






優しい優はあたしの頬の涙をぬぐい
まっすぐあたしを見つめた。

あたしはこの強い瞳に弱い。





「泣いてるヒマがあんなら、泣きながら努力しろ」


「……えっ……?」


「泣いてただけじゃなにも変わんねぇだろ。 陽よりいい男見つけて見返してやれ」





優はいつだって心に寄り添ってくれた

つらいとき、そばにいて頑張れるきっかけの
言葉をくれた


もしも
あたしが優を好きになっていたら、こんなにつらい思いはしなかったのかな?



陽より先に好きになっていたら、
こんなに涙を流さなくてもよかったのかな?




< 179 / 253 >

この作品をシェア

pagetop