誰よりも愛する君へ
その日は朝から霙が降っていた。

いつものように出勤した大沼は社員用の入口に小さな人影を見つけた。

「春ちゃん!!」

「看護婦のお姉ちゃん!」

彼女は少女の濡れた髪を見て部屋の中に入れた。

「霙の中を走って来たの?」

「うん」

少女は大事そうにマグカップを抱きしめた。

「なんで来たの?」

「お姉ちゃん。しんぞういしょくすれば、お父さん死なないって言ったよね」

少女の大きな瞳がだんだん涙で滲んで行く。

「うん」

「じゃあなんで・・・お父さんは死んじゃったの?」

「・・・・・・。」
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