簪彼女。
ぶんぶんと、目一杯頭を振った。
だってだって、失礼にも程がある。
私みたいな女が、高橋君みたいな人気者さんをかっこいい、だなんて。
そして、その気持ちがまるで恋みたいだなんて。
「おぉ、どうした赤松……簪とれっぞ」
そんな私に驚いて高橋君が体をのけぞらせた。
「あ、ごめん」
きっと、私が頭を振ることですっぽぬけるかもしれない簪から逃れるため。
申し訳ない。
そう思って高橋くんを見上げれば、何故か視線を外されてしまった。
パッと、弾かれるように前を向いた高橋くんは口元を手で覆ってしまう。
そのせいで高橋くんの表情が見えなくて、私はまばたきの回数が増えた。
パチパチ、と。
それは不安な時によくやる癖だと、いつかまーちゃんに指摘された事がある。
まさにその通りだな、と、私は今更思いました。