闇に降る雪のように


谷さんが、無造作に煙草の火を灰皿に押し付け

残りのマイルドセブンをがしっとつかみ乱暴にズボンのポケットにしまった。


親父には、こういう粗雑はところはなかった。


親父のズボンのポケットにはマイルドセブンが、いつも原型のままあった。


親父と谷さんはこういうところが違う。


それでも、俺が谷さんこと谷田刑事と親父をつい重ねてしまうのは

もう親父がいないから。


親父は、3年前に癌で逝った。

真面目だけが取り柄の男で、俺たち子供にも優しかった。

一度も手を上げられたことなんてない。


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