闇に降る雪のように
「ま、我慢させてるんで仕方ないですけど

あいつも言いたいこと言いますからね」


このところの理子の悪態に辟易している俺は

そんなんで刑事の嫁が務まるのか・・・・と言いかけて代わりにため息をついた。


「理子ちゃんか?それでいいんだよ。刑事の嫁は明るくて、何でもポンポンいう方がいい。事件の捜査のあと、家に帰っても妙に辛気臭い女なんかいたら、家が湿っぽくなるよ」

谷さんは、理子を気に入っている。

理子は三人姉妹の末っ子で、人に取り入る術は心得てる。


「ま、なんやかんや言って婚約時期っつーのは一番楽しい時期だよ」


谷さんは、結婚した輩なら誰でも言うような台詞を2本目のマイルドセブンに火をつけながら言った。


ふぅ~と煙草の煙を吐いた谷さんは、今回の事件の被疑者、小林沙雪の調書に目を落とした。



「小林沙雪も、婚約者がいたんだよな・・・」



谷さんのつぶやきは


そんな女性がなぜ人を殺めなけらばならなかったのか?


そう聞こえた。

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