放浪彼氏
屋上
制服、ブレザーにシャツのボタンは第一まできっちり留めて。
リボンはボタンが見えないくらい上までピッチリと。
スカートは膝下10センチ。
レギュラーサイズの紺の靴下に綺麗に磨き上げられたローファー。
長く伸びた全く加工のされていない黒髪をおさげに結い上げる。
銀縁フレームの眼鏡を掛けて、もう一度鏡に向かう。
シワなし、埃なし、毛ダマなし。
よしっ!今日も私は完璧…。
「さよーー!!!」
「グエッ」
甲高い声の主を確認する前に、私の首が締め上げられる。
思わずカエルの潰れたような下品な声が漏れて、崩れ落ちた。
それと同時に、私の身体に重い物が。
「おいコラ、いきなり何すんの!」
「小夜ちゃん、聞いて聞いてー!私、溝渕先輩と付き合うことになったのー!」
そう言って私の身体を揺するのは、親友の菊地優衣(キクチユイ)だ。
少し明るめの栗毛は緩いウェーブがかかっていて、ぱっちりとした二重やキメの細かい肌には薄い化粧が乗っている。
小柄で華奢な、正に可愛い女。
もっさい私とは大違いだ。