奥さんに、片想い




「……主任。本当に課長のことがお好きなんですね」



 嘘。


 千夏は熊青年を見上げる。


 いつも笑っている彼のつぶらな目が、真剣にどこか厳しく千夏を見据えている。


「な、なにいっているのよ」


 どうして。恋沙汰にはいちばん疎そうな青年に見抜かれていた? 



 誰にも知られないよう努めてきたはずの千夏には見抜かれただけでもパニックなのに。
 思わぬ男に指摘されたことも、すごいショック。
 もう顔に出てしまった!

「俺、構いませんよ。今の主任の気持ちのままでいいから。一度だけでいいから、俺に付きあってくれませんか」

 一度、ゆっくり俺と話してください。




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