【短編】或るOLの憂鬱~セクシャルハラスメント


主任は、わたしが新採当時からお世話になっている人で、見るからに爽やかな男性だった。


そして良きパパ、良き夫であるようで、先日も息子さんの保育園の運動会の話を楽しそうにしていた。


爽やかでかつ家族を大切にする主任は、女性からの支持が高かった。


わたしは、書庫にずらりと並ぶ綴りを見上げながら、背表紙を目で追いかけた。


違う、違う、違う……これも違う……


その時。


自分の視界に突然主任の顔が飛び込んできたので、わたしは思わず声をあげそうになった。


わたしを捕らえたその視線に、一瞬恐怖を感じたが、すぐに目を細めてくれたので、わたしはほっとした。


「片桐さんって、かわいいよね」


そう言うと、主任は屈託ない笑顔を向けた。

< 4 / 23 >

この作品をシェア

pagetop